あひるさんが宇宙を変える? 超小型衛星のビジネスモデル
アメリカの20分の1! 早稲田大学での公開セミナー『最先端観測機器開発による宇宙科学観測』で、日本の宇宙ビジネスの現状を伺った。
スポンサーリンクセンシング技術を格安にする『あひる』
宇宙の産業化には、宇宙機器を国産化する必要がある。
「企業側としては、宇宙を支える技術を作らなくてはいけないと思う。我々日本人は海外にシステムを売り込むのは下手で、できるかできないかはともかくうまいのがアメリカ人。
じゃあ日本人は何が得意かというと、機器を作る事。これは絶対勝てると思っています。では日本から宇宙機器が海外に出て行っているかというと、今はものすごくごくわずかな製品しかない」
日本の製品技術、部品技術を世界中が待っている。しかし製品への信頼性や技術は高いのに、日本のメーカーが出していない。そこで山口氏らは出せない理由をひとつづつクリアしていこうとしている。
「衛星開発で生まれた極低温断熱材を超電導コイルや超電導送電線に使うことを考えています。狙うのはリニア新幹線。これが売れたら、宇宙開発がやりやすくなる」
産学連携での情報交換や人材の交流も必要だ。
「大学にはさまざまな要素技術があります。企業にはものづくりの技術や事業化のノウハウがある。産学連携では、お互いが技術を出し合える“場”が必要なんです」
早稲田大学の喜久井町キャンパスが、そうした場のモデルケースだ。産学連携で宇宙開発を行うための大型真空チャンバーなどの装置が用意され、民生用に大学と企業が共同開発している超小型衛星の製造とテストが行われている。
衛星を商用利用するには地上側の設備も必要だ。地上用に格安のセンサーを用意し、そこからのデータを衛星で測定、分析することを考えている。土砂災害の防止や農業での作物管理用にセンサーを必要カ所に設置、衛星で行う。
「『あひるさんボード』という格安のセンサーユニットを開発しました。3000円ほどで販売する予定です」
なぜあひるさんかといえば、あひるの人形の中にセンサーを埋め込めば、何の機械かわからずにいたずらされたり、壊される危険性が減るだろうとのこと。
「あひるさんが著作権フリーというのも理由ですが(笑)」
超小型衛星は国が動かすプロジェクトとは別に、民間用衛星として、安い費用でそれに見合ったデータを収集するのが目的だ。それゆえに“ほどよしプロジェクト”と呼ばれる。ほどほどの衛星とあひるさんが日本に宇宙産業の根を育てるだろう。
取材・文 川口 友万
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