防災科研が熊本地震の緊急報告を開催 【第3回】異質な土砂崩れ なだらかな山で起こった斜面崩壊

同研究所の水・土砂防災研究部門・酒井直樹主任研究員は土砂災害の現地調査を発表。特徴的な土砂崩れや住宅倒壊を左右した盛り土の影響を報告した。

山下祐司| Photo by NIED|シリーズ:防災科研が熊本地震の緊急報告を開催

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「阿蘇は地震で土砂災害の起きやすい地域ではない」

土砂
図1【図:防災科研提供 以下同】
土砂
図2

 防災科学技術研究所の水・土砂防災研究部門・酒井直樹主任研究員は「今回の地震は活断層タイプで周期が1秒以下と短いので災害が起きやすい」と説明し、阿蘇と益城町で起こった土砂災害を報告した。

 地すべりの痕跡を調べた「地すべり地形分布図」を示し「火山性地質が広がる阿蘇は雨による土砂災害は起きやすい地域だが、もともと地震で大規模な土砂災害が起きやすい地域ではない」と解説。

 それでも16日の本震で阿蘇大橋をのみ込む斜面崩壊が発生した。

 崩壊を起こした山は稜線もなだらかで、土砂災害が起こらないような山(図1)。

 勾配が急ではない斜面であったにも関わらず、山は崩れ、土砂が橋をのみ込み、その先にある川に達するほど大量の土砂が崩壊していた(図2)。

 雨が原因となる斜面崩壊にはみられないほどの規模の大きさで、「非常に異質」だと語る。

土砂
図3

 なだらかな山であっても、ひとたび地震が起こると大規模になる危険性をはらんでいると指摘した。

 図3右の模式図、青い分部に相当する斜面には亀裂が入りやすい。

 地震波が集中するからだ。また、地震の揺れで土砂が崩壊せず持ちこたえても、次の崩壊の起点になる。

 今後の雨で崩壊する可能性があり注視する必要がある。

 被災した南阿蘇村にある京大の火山研究センター付近でもめずらしい、特徴的な土砂崩壊が起こっていた(図4)。

土砂
図4

 ここの傾斜もなだらかで、周辺は火山粘性土で水を多く含んでいる土地。土の性質から土砂がはやく動くような土地ではないにも関わらず、住宅が押しつぶされていた。

「まさかここで土砂崩れが起こるとは思わないようなところ。土の性質と地震動がかみ合わさると、傾斜が非常にゆるいところでも崩壊がおこる」と説明した。

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