分析のキモは「攻撃力だけでなく守備力を組み込み対戦させる」こと

　シミュレーションによる分析から小中准教授は現行の制度をこう説明する。

「2ステージ制をベースにCSを争うようにみえますが、出場チームの重複が起こるので実質は1シーズン制の勝点上位3チームがCSで争っているようなもの。そこに、年間勝点の順位が4位以下のチームがステージ優勝で救済され、ときおり参入する制度です」

　分析から、年間勝点の上位3チームと1stと2ndステージの優勝チームとが重なり、CSが年間勝点の上位3チームで争う確率が【61.7％】。

　年間勝点の上位3チームと1stと2ndステージ優勝チームのどちらか一方が重なり、CSが4チームによって争われる確率が【35.2】％。年間勝点の上位3チームと1stと2ndステージ優勝チームは全く別になり、5チームで争う確率はわずか【3】％だった。

　この確率は、2010年から2014年までのJ1リーグの実際の試合結果から各チームの平均得点と平均失点をもとにモデルとなる式をつくり、10万シーズンぶんの仮想試合を行って出した数値だ。

　18チームが参加する現在のJ1のリーグ戦では、1シーズンに306試合が行われる。サッカーの得点はポアゾン分布に近似できるため、確率論の例題としてもポピュラーなのだという。

　小中准教授は得点だけではなく、失点も加えて分析できるようにした。2010年から2014年まで、すべての試合の得失点を調べ上げ、各チームの1試合の平均得失点を計算。平均得点を攻撃力に、平均失点を守備力に見立てた。

　チームの攻撃力、守備力と対戦相手の攻撃力、守備力の力関係から得点と失点を予測し（図：自チームの平均得点と相手チームの平均失点ごとの自チーム得点の分布）、その「試合結果」から勝点を計算できるようにした。

　サンフレッチェ広島がJ1上位チームと対戦するときと下位チームと対戦したときとの得点と失点に差がでるように、対戦するチームの「実力」を仮想的にぶつけ合えるようにしたのだ。

「攻撃力だけでなく守備力を組み込み、それぞれのチームを対戦させるところがキモ」と小中准教授は語る。