「STAP細胞はありません」 理研の検証実験が論文になって発表される
STAP細胞の「存在」を否定した検証実験をまとめた論文が公表された。執筆したのは小保方晴子氏の名前がついたSTAP論文にも名を連ねる丹羽仁史氏だ。
スポンサーリンク多能性を獲得していない細胞はSTAP細胞ではない
理研の検証委員会が、論文のデータがねつ造と判定した後に開いた記者会見で、小保方氏は「STAP細胞は200回以上作製に成功しています」と語っていた。
この200回を好意的に考えても、あくまで酸性の溶液に細胞を浸すとOct3/4という遺伝子のシグナルを見たという解釈までが限界だ。
この論文にも示されているのは、多能性を調べる実験を繰り返しても、多能性を示す結果は出なかったという事実だ。
理研のSTAP細胞検証実験が公表された、約1年後の今年の1月に小保方氏は手記『あの日』を上梓し、ベストセラーになった。
不正が行われた実験は山梨大学若山照彦教授の手によるものだと批判し、自ら潔白を書き連ねている。
この手記でも、STAP細胞は存在を小保方氏は疑っていない。その根拠は細胞を酸性の溶液に浸すと、Oct3/4遺伝子と他の多能性に関わる、遺伝子のシグナルが見られたと書かれている。
3月にはSTAP HOPE PAGEというWebサイトでSTAP細胞の作り方を公表した。5月には作家の瀬戸内寂聴氏と雑誌『婦人公論』で対談し、STAP細胞について語っている。
しかし、STAP細胞は存在しない。STAPの由来stimulus-triggered acquisition of pluripotency をシンプルに翻訳すると「刺激による多能性を獲得」になる。
多能性を獲得していない細胞はSTAP細胞ではない。つまり、特定の遺伝子のシグナルを見えただけの細胞はそもそもSTAP細胞ではない。
WebサイトのSTAP HOPE PAGEにも、多能性を確かめる実験についてはひとつも触れていない。
浮かび上がる疑問は、なぜ小保方氏が本来の意味からズレたSTAPという名前に固執するのか。
科学的とは全く別の話ばかりだ。
取材・文 山下 祐司
【了】