「STAP細胞はありません」 理研の検証実験が論文になって発表される

STAP細胞の「存在」を否定した検証実験をまとめた論文が公表された。執筆したのは小保方晴子氏の名前がついたSTAP論文にも名を連ねる丹羽仁史氏だ。

山下祐司| Photo by Hitoshi Tanba

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繰り替えされた実験 結論は「STAP現象は再現出来ない」

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培養液を酸性にするATPを加えて生き残った細胞の塊
【画像:「Investigation of the cellular reprogramming phenomenon referred to as stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP)」より。以下同】

 STAP騒動に関わる「最後」の論文が、6月13日にとうとう公表された。STAP細胞の存在を確かめる、理化学研究所の検証実験の結果として発表した2014年12月のデータに、若干の変更を加えたもの。

 タイトル「Investigation of the cellular reprogramming phenomenon referred to as stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP)」の論文を執筆したのは、STAP細胞を発表した論文の共著者でもある丹羽仁史氏。

 解体された理化学研究所(理研)の、発生・再生科学総合研究センターの元グループディレクターで、現在は熊本大学発生医学研究所教授を務めている。

 この論文が掲載された科学雑誌『Scientific Reports』に、審査される以前に公開していたものとほぼ同じ内容だ。

 体のどの細胞にもなれる多能性を持つSTAP細胞を、酸性の溶液に浸すだけでつくり出せると小保方晴子氏を含めた研究者たちが発表したのは、もう2年以上も前のことだ。

 細胞に刺激を与え、隠れていた細胞の多能性を引き出す現象をstimulus-triggered acquisition of pluripotency の頭文字をとってSTAPと名づけ、この刺激で多能性を持った細胞をSTAP細胞と呼び、ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授たちが見つけ出したiPS細胞にも勝るとも劣らない発見として大々的に報道された。

 しかし、発表した論文のデータに別の研究からの転用などが疑われはじめると、事態は急変した。

 最終的にはSTAP細胞は存在せず、多くの実験で使われた細胞は全く別のES細胞由来だったと判明し、決着がついた。ただし、だれがこのES細胞を用いたのか解明はされていない。

 今回発表された論文は、STAP細胞が発表された論文にねつ造が見つかった渦中に、ねつ造の原因を突き止めるために詳細な調査を求められていたにも関わらずスタートさせた検証実験の結果。

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酸性の溶液で培養しても小保方氏が話していた特別な発光はみられない

 小保方氏とは別に、丹羽氏が中心となって行っていた実験だ。

 繰り替えされた実験結果から導かれた結論は「STAP現象は再現出来ない」。

 確認できたのは、酸性の溶液に浸した細胞のごく一部に多能性に密接に関わっている、Oct3/4という遺伝子のシグナルを発する細胞があったところまでだ。

 しかしこの実験だけでは、STAP細胞が注目される理由となった多能性に関して何も言えない。

 たとえ、Oct3/4遺伝子のように多能性に関連する他の遺伝子シグナルを複数確認できたところで同じ。酸性の溶液に浸した細胞が、ネズミの体にあるどの細胞にもなることを証明できなければ、多能性があるとは判断できない。

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