日本人が大発見! 大阪で生まれたカビやさかい、プラスチック食うたるでえ!

梅雨前線停滞中。この時期、風呂場掃除にかり出されたお父さんをイラつかせるカビだが、その種類は8万種以上。中には想像を絶するスゴイやつも。

工樂真澄| Photo by Getty Images

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作る人いれば、食べるカビあり

 プラスチックが自然に返るなんて、この世は安泰だと思うかもしれないが、これはグリーンプラに限る。

 そもそもグリーンプラは微生物によって分解されやすいものを選んで、そこにプラスチックのもつ特性を付け加えているから、分解されるのは当たり前だ。

 身の回りにあるプラスチックのほとんどは、土に埋めても自然に返らないものばかりだ。発泡スチロールの原料であるポリスチレンは、微生物では分解できない。

 ポリプロピレンは100円均一の容器に多いが、燃やす以外に自然に返す方法はない。これらは回収してリサイクルするのが最も地球にやさしいのだ。

 ペットボトルは、その名の通り「PET(ポリエチレンテレフタラート)」からできている。

 ペットボトルの回収率は6割とも8割とも言われるが、PET樹脂の総生産量からみればたった4%にすぎないらしい。あとはゴミとして埋め立てるか焼却されている。

 PETは微生物の力では分解されず、二酸化炭素を撒き散らしながら燃やさない限り、地球上に蓄積する一方だと考えられてきた。

 その常識を覆したのが、今年「Science」に載った日本人研究者による論文である。なんとPETを分解する微生物を発見したのだ。

 「イデオネラ・サカイエンシス」と名付けられたこの生物は、生物学的にはカビの仲間ではなく細菌の範疇に入る。ちなみに大阪府の堺市でとれたから「サカイエンシス」。

かび
海辺に捨てられたペットボトル…こんな光景も「サカイエンシス」の活躍で見なくなる日も近い!
【写真:Getty Images】

 このコテコテの関西カビは、驚くべきことに好んでPETを栄養源にしているのだとか。

 サカイエンシスのもつ加水分解酵素は、PETをそもそもの材料であるテレフタル酸とエチレングリコールにまで戻してしまう。ここまで分解されれば、あとは簡単に分解されて、自然に返るそうだ。

 しかもサカイエンシスはこの酵素をもとから持っていたわけではなく、どうやら環境に応じて生み出したようなのだ。

 そりゃペットボトルを食べられるようになったら、食糧不足もなんのその、進化戦略としては最強だろう。

 おそるべし微生物の適応力。応用にはまだまだ時間がかかるが、そのうちゴミの分別の概念を大きく覆してくれることだろう。

【参考】
A bacterium that degrades and assimilates poly(ethylene terephthalate).
Yoshida S et al.
Science. 2016 Mar 11;351(6278):1196-9.

Biodegradable Plastic-degrading Activity of Various Species of Paraphoma.
Koitabashi M et al.
J Oleo Sci. 2016 Jun 16.

取材・文 工樂 真澄

【了】

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