地球にとって温暖化を超える影響力!?【明らかになる生物多様性のもつ役割 02】
地球にとって最大のリスクのひとつは気候変動による温暖化と考えられがち。しかし、 生物多様性が地球環境に与えるインパクトもひけをとらず大きい。温暖化対策に遅れをとっていたが、多様性を守る国際的な取組がスタートしている。
スポンサーリンク温暖化よりも深刻な生物多様性の損失
「生物多様性を高めることで、異常気象の被害を緩和できるかもしれない」と話す横浜国立大学の森章准教授たちが報告したのは、生物多様性が高いと、異常気象に対する抵抗力が上がるという研究結果だった。
このように異常気象の増加など、温暖化の悪影響が懸念されているが、生物多様性そのものが温暖化に負けないほどの、大きな影響を地球に与えていることが明らかになりつつある。
2012年には、ウェスタンワシントン大学のデイビット・フーパーらの研究チームは、生物多様性が地球にとって、どれほどの影響力をもっているのかを調べている。
大気中の二酸化炭素濃度や、酸性雨の原因となる大気中の窒素濃度、紫外線、温暖化など地球環境を大きく変動させる要因が引き起こす一次生産量の減少と、生物多様性が低下したときに起こる一次生産量の減少とを比べた。すると、20%~40%の多様性の減少は、紫外線照射や温暖化に匹敵するほど、地球環境にマイナスのインパクトを与えると報告した。
また、著名な環境学者である、ストックホルムレジリアンスセンターのヨハン・ロックストロームらは、2009年の時点で地球という惑星システムに、もっとも甚大な影響を与えているのは、気候変動(温暖化)でも土地利用の変化でもなく、生物多様性の損失であると指摘している。
異常気象や、地球環境へマクロな影響だけでなく、直接、人の収入に結びつく生物多様性のミクロな機能も明らかになっている。代表的なのは、南米・コスタリカのコーヒー農園のケースだ。
「環境配慮型の農業により、鳥の種多様性を保全すると生物防除の機能があがり、害虫被害を減らすことで、コーヒー農家にとっての経済損失を防ぐことができることが分かっています。この事例は、生物多様性が人々の利益になるという好事例です」(森准教授)