これが今年のトピックスだ! 金星の謎を日本が解明? 宇宙像が激変? 【ニュートン編集部が大予想! 02】
『ニュートン』は日本を代表する老舗科学雑誌だ。編集部長である高嶋秀行さんに、今年注目すべき科学トピックを伺った。
スポンサーリンク金星探査機『あかつき』金星周回軌道への投入
『あかつき』から送られてきた金星画像
紫外線イメージャ(UVI)2015年12月7日14:19ごろ撮影(日本時間) 金星高度約7万2千km
【写真:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構プレスリリースより転載】
――2016年に起きるだろう、科学トピックの予想を。
「昨年の12月7日に金星探査機『あかつき』が金星の周回軌道に投入されました。
観測機器のチェックを行って、今年4月から本格的な観測を行っていくそうです。
その観測から 、面白いことが色々と出てくるかもしません」
――火星はなんとなく馴染みがあるんですが、金星って知らない。やたら暑いって聞きますけどねえ。
「金星は不思議な天体ですから面白いと思いますね。1番の謎はスーパーローテーションと呼ばれている現象です。
地球では 、偏西風の秒速が30メートルくらいで、自転速度の10%程度です。
一方、金星は自転速度がすごく遅いんですよね。地球と比較したら 、ほとんど止まってるくらいなんです。
自転周期243日。日が昇って沈んでまた昇るまで、243日もかかる」
――えらく長い1日ですね。
「しかも自転の方向は 、他の惑星と違って公転の方向とは逆向きです。
自転が遅いので偏西風のようなものも遅くなりそうなんですけど、高度70メートル付近の風速が秒速100メートル(笑)
自転速度の60倍の暴風ですよ? 意味わからないですよね。
それが謎なので解明したいっていうのが一番大きい目標です」
高嶋 秀行さん
1975年、福岡県宗像市生まれ。1997年、東京大学工学部物理工学科卒業。1999年、同大学大学院工学系研究科超伝導工学専攻修士課程修了。読売新聞社青森支局および三沢通信部で、記者として六ヶ所村の核燃料サイクル施設や自衛隊・米軍三沢基地などを担当。2001年10月よりニュートンプレス社で編集者・記者として勤務。現在は月刊誌ニュートンのデスク(執行役員・編集部長)などを務める【写真:川口友万】
――金星にも地べたはあるんですよね?
「あります。結構、金星は地球と似ているんですよ。
太陽からの距離は地球が1億5000万キロ、金星は1億820万キロ。
惑星の半径も、地球が6400キロに対して金星は6000キロ。
それにも関わらず自転周期はまるで違うし、大気組成も違う。
金星は二酸化炭素が96パーセントで、気圧なんて90気圧。表面温度なんて460度もあるんです」
――ちょっとした地獄ですね。
「似てるのに全然違う2つの星。『あかつき』を使って金星の謎を解くことで、地球の気候についても理解が深まるだろうと」
――他の惑星を調べるってロマンですよねえ。
「日本がそもそも惑星探査で成功した例がないんですよ。
月や小惑星には行ってますけど、火星は失敗しています。
惑星は初めてなんですよね。なので日本の探査としては記念すべきことです」