【食べる科学実験】なぜ人はラーメン二郎に並ぶのか? 魅入られる謎を科学で解明

開店前から閉店まで延々と途切れることなく人が並ぶ謎のラーメン屋「ラーメン二郎」。その何がそれほど人を熱狂させるのか? 

川口友万| Photo by Tomokazu Kawaguchi|シリーズ:食べる科学実験

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脂とうま味調味料に脳が中毒する

二郎
「魔法の舌」
(伏木亨・祥伝社ノン・ブック)
【写真提供:祥伝社ノン・ブック】

 グルタミン酸等のダシにも油と同様にマウスを執着させる効果があるという。

<小腸の細胞にはグルタミン酸と脂肪酸が<よく似た物質として認識される>
(祥伝社ノン・ブック「魔法の舌」)

 これはグルタミン酸と脂肪酸の構造がよく似ているためらしい。

 油分の少ない日本料理に日本人が満足できたのは、ダシの力が大きいのだ(ただし味の素の研究では、うま味に習慣性は見られなかったそうだ。今後の研究が待たれる)。

 食べ物による報酬系の刺激は麻薬と違ってごく短い。しかも! 食べる前にピークを迎えるという。

 油をもらえるとわかったマウスは<口にする前から快感関連の神経系が興奮し始め><βエンドルフィンを作る遺伝子が動き出し>て最高潮に盛り上がっていく。

 ところが食べ始めると<速やかに潮が引くように遺伝子の働きが終わってしまう>。

 こうした食べる前に脳が準備する反応はマウスに油を何度も与えた後でのみ起き、<数日間油を与え続けると期待の快感が出現>する(新潮新書「コクと旨味の秘密」)。

 だからなのだ。だからラーメン二郎は“3度目からやみつきになる”。

 この脳の働きこそがラーメン二郎の秘密だった。その正体は脂とグルタミン酸と“行列”。

 無性に食べたくなるのはβエンドルフィンの働きであり、数日後に訪れた、急きたてられるような焦燥感はドーパミンの働きだ。

 行列も脳を刺激する。並ぶことで高まるβエンドルフィン! 

 そして食べた後の虚脱感とイヤになる感じはβエンドルフィンの生産終了のサインだったのだ。

 ラーメン二郎の大量の脂とグルタミン酸が、脳に恍惚感を引き起こす。しかしその気持ちよさが何によるのか、食べた人は知らない。

 知らないから、同じ恍惚感を得るには二郎のラーメンを食べるしかない。だから再び行列する。

 結論しよう。ラーメン二郎を食べた人は、ラーメン二郎によってしかイケない脳になってしまうのだ!

 ラーメン二郎、恐るべし。脂とうま味の恐ろしさを体感したければ、ラーメン二郎へ。

 自分の体で、文字通りに身をもって、その効果を知ることになる。アブラマシマシ! と唱えることも忘れずに。

取材・文 川口 友万

【了】

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