【あぶない医学のおかしな常識】第1回 「米を食べる日本人の腸は欧米人より長い」という話はウソだった?!

非科学的インチキ医学をやっつけろ! アルファブロガー、五本木クリニック院長・桑満おさむ先生のブログから医学エッセイを厳選してお届けします。

桑満おさむ| Photo by Tomokazu Kawaguchi|シリーズ:あぶない医学のおかしな常識

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続・肉の話

くわまん
『肉はあぶない? (カン・ジン・カナメの健康教室)』(平山郁・森梅子・USAKICHI・阿部有軌・椎名里実・真弓定夫 (編集) /美健ガイド社)

【肉食だとがんでの死亡率が高まる??】

 肉食だとがんになりやすい、という話を多くの人が耳にしたことがあると思います。

 肉食とある種のがんの関連性については、肯定する論文と否定する論文の両者があり、最近は「肉食もそれほど悪さはしないんじゃない?」という論文が目立ってきています。
 
 それを裏付けるように今まで肉食は、コレステロール値を高める原因として考えらていましたが、本年発表された厚生労働省が出す「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、コレステロールの摂取量の上限を撤廃しています。

「食品に含まれるコレステロール量と血中コレステロール値の関連性は現時点で摂取量の上限を決める科学的根拠がない」

 ということなんです。

 とんかつ大好きな肉食系オヤジは随喜の涙を流すであろう、この情報、ご存知でしたか?

 前述の本はトンデモ系の香りが漂うのですが、その理由として2012年に出版されているのに、脂身と死亡率の関係を表すのに1977年までのデータをグラフにしています。

 これはトンデモ系、ニセ医療系特有の古いデータ使用であり、さらにそのグラフもインチキ医学が使用する例にもれず、グラフの縦軸が0から始まっていません。

 以前は感染症や脳卒中が死因の多くを占めていましたが、抗菌剤の開発、塩分を控えた食生活などにより、これらの病気で死ぬ人の率は減ってきて当たり前なんです。

 日本人全体が長寿になって、高齢者だとリスクが高まる「がんでの死亡」が増えて当然なんですからね。

【肉はあぶない派VS炭水化物ダイエット】

 肉はあぶない、悪者派の考えは「日本人古来の生活を」とも取れますので、急激に右傾化しているとされる今の日本ではもっとウケてもいいような気もします。

 逆に「白米は避けよう」「肉食はどんなに摂っても大丈夫」という炭水化物ダイエット派は国粋主義的な人から攻撃されて良さそうなものですが、そのような話は寡聞にして知りません。

 肉食否定派の本来ならば啓蒙本になるはずの予定が、あまりにもヒステリックな内容のため、主義を主張することに大いに失敗していると考えます。

「肉食はあぶない?」はマンガなんですが、表紙が怖すぎるし価格も630円ですから、子供が自発的に欲しがって買うはずないですよね。

文 ・桑満 おさむ
構成・編集部

【第2回に続く】

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