オートフォーカス! 夜間もOK! 老眼に光明 開発が進む次世代コンタクトレンズ

40代に入った頃から多くの人が悩まされる老眼。この症状を劇的に改善するコンタクトレンズが、近い未来に登場することになりそうだ。

岡真由美| Photo by Ashinari

スポンサーリンク

老眼
手元が視えない煩わしさ……【写真:足成】

 加齢により水晶体の弾性が失われ、ピント調節力が弱まる老眼を抱える人々は世界で10億人以上いるとされ、そのうち半数の人々は正しく視力矯正されていないという。

 既存の老眼鏡やコンタクトレンズ、あるいは手術でも老眼はある程度矯正できるが、夜間に見えにくくなるという老眼のもうひとつの症状は改善されない。

 米ウィスコンシン大学マディソン校のホングリ・ジアン博士らが開発に取り組んでいるのが次世代コンタクトレンズ。

 ピントを自動的に調節するリキッドレンズの中に、微細な画像センサー、電子回路、センサーや電子回路の動力源となる太陽電池がすべて埋め込まれ、夜間の視力も保証する。
 
 画像センサーの参考にしたのは、濁った水中で生息するエレファントノーズフィッシュの目。暗い場所でもわずかな光を取り入れることができる特殊な網膜構造を備えているからだ。

 その網膜は、極小の深い「カップ」がびっしり並んだ構造となっている。カップの内側で光を反射させ、特定の波長を増幅することで暗い場所での視力を確保している。

 ジアン博士らは、手袋の指の部分のような微細な突起物(内側は空洞で、光を反射するアルミニウムでコーティングされている)が数万個並んだ光捕捉器からなるセンサーを開発した。

 レンズには互いに混じり合わないシリコンオイルと水の液滴を用いた「リキッドレンズ」を使う。2個の電極によって電場を作り出し、各液体に異なる表面張力を生むことで、焦点距離を調節する。このレンズは最小20マイクロメートルの物体にピントを合わせられるという。

 ジアン博士によれば、臨床実験に使用可能なプロトタイプを作るまでにまだ5年から10年はかかる見通しだが、現在のコンタクトレンズとさほど変わらない値段に抑えられそうだという。

 博士らの研究は米国立衛生研究所(NIH)の2011年ディレクター新イノベーター賞を受賞、NIHから開発資金を受けている。NIHが現時点までの研究成果を、3月14日に公開した。

取材・文 岡 真由美

【了】

PAGE TOP ↑