自分の部屋に100万個の星! 宇宙空間を家庭で「再現」できるプラネタリウムが130万円で発売
稀代のプラネタリウム・クリエーター大平貴之ひきいる大平技研が130万円の値段をつけて発売した「MEGASTAR CLASS」の実力とは?
スポンサーリンクMEGASTAR CLASSは「室内に星空をつくって天井を取っ払う装置」
星に手が届く――。そう思いながら横浜市にある大平技研の真っ暗な一室で、天井に向かって手を伸ばしていた。
無数の光の集まりに触れてみると、ざらついた天井の感触が伝わり現実を知らせてくれる。そのとき、あらためて思いだしていたのはプラネタリウム・クリエーター大平貴之の語った言葉だ。
「星を美しいと感じるのはなぜか。物理的には光の点が無造作に並んでいるだけです。でも人はずいぶんな費用をかけて再現しようとしている。考えてみれば不思議なことです」
空気清浄機のような白い円柱から放たれた光が、6畳ほどの何の変てつもない部屋を宇宙空間に変える。
白色に光る星々が間近にあるこの経験は、一般的なプラネタリウムで遠くに星空をみるものとひと味違う、特別なものだった。
大平貴之が代表を務める大平技研が今年の3月に130万円(税別)の値段をつけて発売した「MEGASTAR CLASS(メガスタークラス)」の実力だった。
希代のプラネタリウム・クリエーター大平貴之。それまでのプラネタリウムで映し出されていた星の数を飛躍的にアップさせたMEGASTAR(メガスター)という名前の“モンスター”投影機を開発し、プラネタリウムの常識を覆した人物だ。
投影機とはプラネタリウムのドームに星を映し出す機器。大平はMEGASTAR CLASS(メガスタークラス)を「室内に星空をつくって天井を取っ払う装置」だと説明する。
「満天の星を映し出す機能に特化して、他の機能を大胆にそぎ落とした商品だといえます。今まで公共施設に導入されているプラネタリウムは1台あたり数千万から数億円の費用が必要でした。
本物のプラネタリウムを身近な空間で使えるようにしたのがMEGASTAR CLASSです」
世界ではじめての現代型のプラネタリウムが製造されたのは1923年のドイツ。光学機器の名門、カール・ツァイス社が製造したI型投影機はドイツの夜空を再現し約4500個の恒星と5つの惑星をドームに映し出した。
翌年には世界各地の星空を投影できるⅡ型投影機が開発され、これがプラネタリウムのスタンダードになる。
それから100年もたたずに、同じ光学式で圧倒的な描写力をもち、なおかつ自分の部屋で投影できる小型プラネタリウムが発売された。
1937年に大阪市立電気科学館に設置された日本初のプラネタリウムにもカール・ツァイスのⅡ型投影機が導入された。
以来、1989年まで活躍したという。日本プラネタリウム協議会の2010年のデータによれば日本にあるプラネタリウムは360施設。
鉄アレイのような見た目の投影機はまだまだ現役で、このタイプの投影機で運営されているプラネタリウムも多い。
誰もが小学生のころに引率されて一度は見たことがある特徴的なかたちで、印象に残っているのではないだろうか。
とはいえ、ここ10数年で鉄アレイ型から、球に近い薬のカプセルのようなかたちの投影機に入れ替わってきている。
最も大きな変化は投影できる星の数の増加。その火つけ役となったのが1998年に大平が発表したMEGASTARだった。
それまでは数千個から当時の最新型で数万個程度だった映し出す星の数を一気にジャンプアップさせ170万個の星が輝く、超ド級の投影機をつくったのだ。
星空の勉強が主な役割だったプラネタリウムが感動できる場所として生まれ変わった瞬間だった。投影できる星の数はさらに増えてフラッグシップ機のSUPER MEGASTAR-Ⅱでは最高で2千200万個にまでなった。大平は言う。
「MEGASTAR CLASSはその名前に『MEGASTAR』と冠しているように、世界中に導入されているプロ用MEGASTARを継承した正統な投影機です。光の強さのランクでいう10.5等級より明るい100万個の星を映し出します」