自分の部屋に100万個の星! 宇宙空間を家庭で「再現」できるプラネタリウムが130万円で発売

稀代のプラネタリウム・クリエーター大平貴之ひきいる大平技研が130万円の値段をつけて発売した「MEGASTAR CLASS」の実力とは?

山下祐司| Photo by Yuji Yamashita,Ohhiragiken

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進化する家庭用プラネタリウム

大平
MEGASTAR CLASSはたった1つの魚眼レンズで無数の星を映し出す
【写真:山下祐司】

 MEGASTAR CLASSのような価格ではないが、家庭用のプラネタリウムはこれまでにいくつも売り出されてきた。

 自分でつくる子ども向けから、組み立て済みの観賞用プラネタリウムまで数千円から数万円ほどの価格で購入できる。

 大平が監修し、セガトイズから販売されている世界初の光学式家庭用プラネタリウムのホームスタークラシックは約1万円だ。

 過去には6万円を超える上位機種もあった。現在販売されているスタンダードタイプは1万個の星が天井や壁の一部にだけ丸く投影される。これまで世界中で約100万台を売り上げた大ヒット商品だ。

「プラネタリウムは恒星原板が命。ホームスターは手軽に楽しめる家庭用ですから恒星原板はフィルムを使っています。

 MEGASTAR CLASSは他のMEGASTARと同じ金属製で社内製造です。それに天井の一部だけでなく周囲180度をおおうように星を映し出します」

 プラネタリウムの星は、無数の穴が開けられた恒星原板とよばれる板をライトの光が通過して映し出されたものだ。

 恒星原板とはいわば星空の設計図。わずか直径数センチの恒星原板の中に星の位置に対応した極めて小さな穴(最小で7/10000㎜)があいている。金属製の恒星原板なら星をシャープに映し出せる。

「MEGASTARが示す最大のメッセージは宇宙に存在する無数の星たちです。MEGASTARの神髄はそこにあります」と大平は語る。

 MEGASTAR CLASSを作製するためにMEGASTARからそぎ落とされたのは緯度を制御する装置。
 
 簡単にいってしまえば、一般的なプラネタリウムなら世界中どこの空も投影できるが、MEGASTAR CLASSは北緯35度に固定し日本の空だけ映し出す。そして星に色をつけ加える機能などがはぶかれている。

 また、従来のMEGASTARは32個のレンズを使って星を投影するが、MEGASTAR CLASSではたった1つの魚眼レンズを使う。

 空を分割して32個のレンズでエリアを分担し、どの星にもピントが合うように調節されたMEGASTARと違い、MEGASTAR CLASSはレンズが1つなので、ピントの合う範囲から外れる星が出てくる。

 その星はぼやける。また、魚眼レンズは中心から離れるほど色のにじみが顕著になる。これを収差という。

「魚眼レンズを上に向けているので、地平線に向かうにつれて収差はどうしても出てきます。それでも昔に比べレンズ自体の性能がだいぶよくなっています。

 32個のレンズを使うのと近い印象の星を映せます」と大平は説明する。

 とはいえ、レンズのもつ“宿命”として天井にピントを合わせるとそこから離れるほど星はぼやけ、光はにじんでくる。

 しかし壁にかなり近づけピントを合わせて使わない限り、ピントの合う範囲も狭くはなく、レンズの性能と圧倒的な星の数のおかげか、さして気にならない。

 好意的な解釈に思われるかもしれないが、遠近感を強める演出にすらみえてくるほどだ。

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