行列ができるプラネタリウム、世界最強100万個の星空が家へやってくる! 天才・大平貴之インタビュー

宇宙空間を家庭で「再現」できるプラネタリウムMEGASTAR CLASSが130万円で発売された。新たなニーズを掘り起こせるか注目が高まる。

山下祐司| Photo by Yuji Yamashita,Ohhiragiken

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きれいな星空をみたいという欲求は万国共通

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MEGASTAR CLASS本体。空気清浄機のような白い円柱から放たれた光が、6畳ほどの何の変てつもない部屋を宇宙空間に変える。
【写真提供:大平技研】

 プラネタリウムの新たな価値を創造し、活躍する場を広げてきた大平。現在の自分たちの仕事をこう説明する。

「人はなぜ満天の星空を見上げたいと思うのか? 不思議なことです。食欲や性欲、睡眠欲のように生命の維持に直結する欲求とは違いますよね。

 ひとつ言えるのは満天の星空をきれいだと感じ、心が振るえ感動する。だからこそ今までできなかった場所で、宇宙の広がりを体験できる機会を提供するのが、私たちの仕事の本質だと思います」

 大平の考えがここにあらわれている。プラネタリウムは感動を呼び起こすアートやエンターテインメントのひとつとも言える。

 それこそがMEGASTARが切り開いてき道だからだ。ただし、この考え方は一般的ではない。プラネタリウムはあくまでも、星空を学ぶことがベース。

 そんな意識は地人書館から出版されている天文学事典にみられる。プラネタリウムの説明にこう書かれている。

〈プラネタリウムで投影される星の数は、理想的な夜空の下で見ることのできる6.5等星までの全天9100個が基本である。〉

 MEGASTARは基本からはずれた投影機ということになる。そしてこう続く。

〈ただし、天の川を微光星で再現する等の目的で、肉眼では、たとえ宇宙空間に出ても見えない暗い星まで投影するものもある。

 日本人技術者大平貴之が開発した『MEGASTAR』はその代表例であり、全天560万個の星を映し出す。〉

 MEGASTARをつくり、無数の星を人々に見せ、その反応を直接受け取ってきた大平にとってプラネタリウムは「人の心を動かす力」を持つ特別なもの。

 現在、MEGASTARはMEGASTAR CLASS,Jr まで入れると11カ国、28 ヶ所で常設展示されている。

 アメリカやロシア、アルゼンチン、インド、UAEなどさまざまで、大陸別にみると残るのはアフリカ大陸だけだ。

 きれいな星空をみたいという欲求は万国共通で、MEGASTARが映し出す特別な星にどの国の人々も魅了されているという。

 大平技研のプラネタリウムの進化は、投影する星の数を増やすだけではない。2012年にはプロジェクターからの映像と光学式からの無数の星を重ね、同調させながらコントロールして投影するMEGASTAR-Ⅲ FUSIONを発表した。

「かわさき宙と緑の科学館」に導入されたその映像には度肝を抜かれた。たとえるなら映画で広がる夜空の一部に、MEGASTARを使いシャープに輝くきれいな星たちを映し出すようなものだった。

 今年は130万円のMEGASTAR CLASSの販売を開始した。期待する次回作のヒントは聞き出せなかったが、今のプラネタリウムとかけ離れたものになるという。

 大平は現在、プラネタリウムについてこう考えている。

「太陽の周りを公転する地球のような星が、宇宙には無数にあることをプラネタリウムは教えてくれます。

 宇宙のスケールで考えると、もしかしたらどこかの星には生命が存在する。生命が宿る他の星を想像することで、地球に住む人類を客観的にみる。そういう視点を提供できるのがプラネタリウムの役割かもしれない」

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