【食べる科学実験】 バカか? 天才か? 超絶炭酸製造器『キリツボ』爆誕! (前半)

これは何? 謎のマシン『キリツボ』。パイプが結合した妙な器械の正体は炭酸ガス製造装置だった!

川口友万| Photo by Tomokazu Kawaguchi|シリーズ:食べる科学実験

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ためしてガッテン! でガッテンしてしまったのが始まり

キリツボ
発生側のペットボトルにクエン酸と重曹を入れる、スポンジ製のフィルターが足場になり、2つの粉末は混ざらない

 発想はすごいのだが、どう見ても実験器具な『キリツボ』。開発途上というか粗削りというか、このレベルの製品が世に出る姿を見ることは、まずないのではないか?

 開発・販売を行っているKIRITUBO代表の峯村健太郎氏に話を聞く。

― なんで『キリツボ』、炭酸マシンを作ろうと思われたんですか? いきなりこれで独立されたわけじゃないですよね?

「偶然、NHKの『ためしてガッテン!(現:ガッテン!)』で炭酸の紹介の回を見たんです」

― ガッテンで? 

「それまで炭酸は体に悪いという認識でしたが、実は体にいい、役に立つものだということを学びました。それで炭酸関連で何かやってみようと……」

― ……ガッテンしちゃったんだ。

「クエン酸と重曹と水で炭酸ガスを発生させ、その炭酸ガスのみを不純物の含まれていない水に圧入させることにより、炭酸水が得られます。その仕組みは知っていたので、本格的にやってみようと思ったのです」

 クエン酸と重曹で入浴剤を作るというのはよくやる。小中学校の理科の時間や科学館の催しの定番だ。しかし炭酸水を作るというのは、まずやらない。難しいのだ。

 クエン酸と重曹を水に溶かして得られた炭酸水を、そのまま飲むとマズい(酸っぱいまたは苦い)。

 これは、クエン酸と重曹を反応させると二酸化炭素と水とクエン酸3ナトリウムが得られるのだが、このクエン酸3ナトリウムが炭酸水の味を壊してしまうことによる。

 だから炭酸ガスだけを取り出して、不純物の含まない水に溶かさなければならない。だが、そんな装置、どこにもない。自作するしかない。

「密閉連結型の構造のものは頭に描いておりました。(おそらく多くの人が思いつくだろうと思います)。

 そのため、最初はペットボトルを2本用意し、その2本をシリコンチューブ付きキャップ(自作)で密閉連結した構造を作りました。シリコンチューブは近所のホームセンターで手に入ります」

― ホームセンターって便利ですよね。私も近所にホームセンターがなかったら、実験してないですよ。

「片側のペットボトルに「飲料用の水」を準備後、もう片方に「水」「クエン酸」「重曹」を入れ反応させます。その後、キャップを閉め、密閉連結させ、炭酸ガスのみを飲料水側のボトルに移動させます。

 その結果、飲料水に炭酸ガスを溶け込ませることができました。得られた炭酸水は、思った通り、不純物の含まないおいしい味でした。このとき「頭に描いていたもの」に間違いがないと確信しました」

― 意外とあっさりできましたね。

「まさか(笑)。たぶんこのやり方だと、多くの人が、「破裂しそうで危ない」とか、「要領が悪そう」と感じると思います。

 実際その通りで、炭酸ガス発生させた直後、炭酸ガスの外部流出を防ぐために、大急ぎで、キャップを閉めなければなりません。

 また強い炭酸を作ろうと内圧をたくさん上げたところ、シリコンチューブが破裂しました」

― 破裂しましたか。サイエンス的には、いい話ですねえ。

「正確にはチューブが数センチ裂け、そこから水が噴き出すし、水鉄砲を食らってしまうアクシデントがありました。まぁ、予想はしてましたが(笑)」

― にしても、ホントに『キリツボ』で独立したんですか。チャレンジャーですねえ。

「きっと凝り性なのでしょう。改良を続けていきました。最終的に、安全性と効率性に問題がない段階までたどり着いたため、製品として売り出すことにしたのです」

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