体のサビをとる! 細胞が若返る! といわれる水素水ですが、何よ?

「水素水」をもう試されただろうか? アルミ缶入りでお値段お高め。特別な味がするわけでもなく普通の美味しい水だが、果たして効くのか?

工樂真澄| Photo by Getty Images

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活性酸素を除去って言うけど……

水素水
図:吉川敏一教授 最終講義 「フリーラジカルの医学(フリーラジカルと活性酸素の関係)」 京都府立医科大学

「水素水」市場の活気の背景にあるのが、水素が「活性酸素」をやっつけるという理論だ。

 分子や原子の対になっていない電子、すなわち「不対電子」を持つものをフリーラジカルという。フリーラジカルは他の分子から電子を奪おうとするため、不安定で反応しやすい。

 活性酸素と呼ばれるのは、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、過酸化水素だが、いずれも生体で絶え間なく生じており、反応性が高い。

 いまや諸悪の根源のように扱われている活性酸素だが、実は外的から身を守る大切な存在だ。細菌などが体内に入りこむと、白血球やマクロファージと呼ばれる細胞が「スーパーオキシド」を産生して細菌を殺す。

 ただし活性酸素が過剰になると、DNA鎖や、タンパク質のもとであるペプチド鎖の切断を起こしたり、生体膜脂質を酸化して膜機能を停止させたりする。

 このような「酸化ストレス」が、がんや高血圧、糖尿病や認知症、老化などの原因になるとされている。

 酸化ストレスの暴挙を阻止するべく、人は進化の過程で様々な「抗酸化防御機能」を獲得してきた。

 代表的なのは「SOD」という酵素で、スーパーオキシドを過酸化水素に変化させる。過酸化水素を水にしてしまう「GPX」という酵素も、防御機能の一員だ。

 ただしこれらの酵素は必要に応じて合成されるもので、常にあるわけではない。防衛隊を呼び出すカギになるのが、食事からとる「栄養素」だ。

 緑黄色野菜に多く含まれる「カロテノイド」は、一重項酸素の強力な消去剤。

 GPXはマグロやサバなど、魚介類に多く含まれる「セレン」や「EPA」がないと働けない。「ビタミンC」や「ビタミンE」はそれぞれ水溶性、脂溶性の活性酸素を捕まえる。

 要するにこれらの栄養素を含む食事をちゃんと食べていれば、酸化ストレスは効率よく安全に軽減される。

 そう考えると、生体でのメカニズムや副作用の明らかになっていない水素水を、健康人が日々取り続けることには、はなはだ疑問が残る。

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