『米・史上最悪の銃乱射事件』 アメリカの銃による死亡率が深刻
米国でまた銃乱射事件が起こった。23カ国の死亡率から比較したデータをみると、米国の特殊性が際立つ。米国は自殺にも他殺にも銃を使う率が桁違いなのだ。
スポンサーリンクフロリダ州オーランドのナイトクラブで銃乱射事件が起き49人(6/15現在)が死亡した。オバマ大統領はホワイトハウスで会見し、「これはテロ行為であり、憎悪による行為であることは確かだ」と断じた。
CNNによれば犠牲者は2007年に32人の犠牲者を出したバージニア工科大学乱射事件や、2012年にコネティカット州の小学校で起きた乱射事件の27人を超え、米史上最悪の銃乱射事件だという。
銃による殺人事件が起こるたびに、銃規制が話題にはのぼるがその動きは停滞している。
1992年にはハロウィーンで仮装をした日本人留学生が間違った家を訪ね、射殺された事件も起こった。なお、射殺した住人は裁判で無罪の判決が下されている。
2015年、米国の医学誌『The American Journal of Medicine』に発表されたネバダ州立大学のエリン・グレンステン准教授とハーバード公衆衛生大学院のデビッド・ヘムウェイ教授の報告では、OECDに加盟する日本や英国、ドイツなどを含めた所得の多い22カ国と米国の銃を使った殺人を2010年のデータから比較している。この殺人の中には銃による他殺と自殺も含まれる。
人口10万人あたりの銃による他殺死亡数を比較すると、米国はほかの22カ国まとめた数値の36倍もの高さを示した。米国に次ぐ銃の他殺死亡数が多いカナダと比較しても7倍以上の開きがあった。
死因のうち銃を使った他殺の割合を比べると、米国は他の22カ国をまとめた数値より25.2倍も高い。特に、15歳から24歳までと25歳から34歳までに分類すると極端に上昇する。
割合でみると米国はそれぞれ49倍と32倍の高さを示した。今回の乱射事件の容疑者は29歳だ。
銃による殺人は他殺だけではない。米国では自殺にも銃の使用する人が最も多い。人口10万人あたりは3.6。
ただし、フィンランドやオーストリア、フランスでは他人から銃で殺される人の割合は小さいが、自殺になると逆転が起こる。
人口10万人あたり3.3と2.7、2.2と銃を使う人が増えるのだ。ただし、銃を使わない手段による割合のほうが高い。
米国だけが桁違いに他殺にも自殺にも銃が最も多く使う国だ。
米国のネバダ州立大学とハーバード公衆衛生大学院に所属する著者たちは「米国の銃は人を守るよりも殺している」とこの論文を結んでいる。
取材・文 山下 祐司
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