【あぶない科学実験】脳に電気を流すと頭が良くなる! 謎の電気刺激を自作

脳を作り替え、高性能化する! 脳に直流電流を流すと、反射能力が2倍にも強化されるというのだ。恐ろしく単純な仕組みだったので、自作してみた。結果は恐ろしいものだった。

川口友万| Photo by tomokazu kawaguchi|シリーズ:あぶない科学実験

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やるんじゃなかった、こんな実験

 よく考えれば、必要なのは9Vの電池と電極だけである。そんなもの、ホームセンターへいけば、何とでもなるんじゃないか? 電極は電気部品の棚ですぐに見つかった。額にくっつけるので、じかに頭皮に付けるとヤケドする可能性があるので、ゴムで覆い、スポンジを付ける。これで完成。10分もかからない。

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ホームセンターで調達した電極【写真:川口友万】

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適当なゴム栓に電極をねじりこむ【写真:川口友万】

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完成。1000円もかからなかった【写真:川口友万】

 100円ショップで水泳帽子を買ってきてかぶり、電気が流れるようにスポンジは塩水で濡らした。水泳帽子と頭皮の間に電極を差し込んだ。電極の反対側は9V電池につないである。

 100Vならともかく、たかが9Vである。どうってことないと電池をはめ込んだ、その瞬間。

 目の前に稲妻が飛んだ。

「うおおおお!」

 帽子をかなぐり捨てた。聞いてないよ!

 いい加減にしろよ、俺! 俺を殺す気か、俺! あのな、目の前が紫になったんだぞ! 真っ白な稲光が頭の後ろから目の前に向かって、左右同時に走ったぞ? 聞いたことないぞ、そんなの。口から火が出たり、喉から手は出ても、目から稲妻は飛ばんのだ、人間は! 目から飛ぶのは星だ!

 あ~ビックリした。

 頭皮がピリピリ痛い。頭が良くなるどころか、脳神経が500本ぐらい切れた感じだ。電流が流れ過ぎだ。

 スポンジを濡らすのをやめて、再度、挑戦。恐る恐る電池をつなぐと、視界の周囲が白い。後頭部のあたりに電灯があって、後ろから照らされているみたいだ。どうやら電流が視神経を刺激し、光が見えるらしい。しかも、ずっと何かが焼けたような臭いがする。神経が刺激されて臭いを感じるようだ。不快である。1時間ほど付けていたが、気分が良くなるわけでもなく、頭の回転が早くなった気もしない。

 それから何度か試したが、目の前が白くなって臭いだけである。俺はいつAKB48を覚えればいいのか?

 ふと鏡で自分を見ると中年のおっさんが水泳帽子。

 (こんなヤツ、どっかで見たな)

 ……思い出した。

 秋葉原のマハーポシャだ。あのオウム真理教が経営していたパソコンショップ、マハーポーシャ。起動させるとハングル文字が出てくるパソコンを売っていた、あそこで見た。ビラを撒く信者が同じような格好していた。ヘッドギアだ。向こうは電極が多く電圧が高いけれど。

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電極が多く電圧が高いだけで、オウム真理教のヘッドギアと基本的な考え方も機能も同じ。本当に効くのか? まるでわからない【写真:川口友万】

(同じじゃねえか)

 なんてこったい、俺なんか、俺なんか……ポア!

 tDCSの研究は世界中で行われており、電極を脳のどの場所に接着するかで、記憶力の増強や洞察力の拡大、運動能力の改善など効果別に使い分けることができるらしい。電流によって脳の機能を恣意的に操作できるわけだ。

 たぶんできるんだろうな、きちんとやれば。でもホームセンターと100円ショップじゃちゃんとしたものはできないんだなとよくわかった。

 良い子はマネしてはいけません。

取材・文 川口友万

【了】

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