食べる順序は米より魚や肉が先。血糖の急上昇を抑えて糖尿病予防

目線を下げると、視界に入るのはふっくらとしたお腹。不健康だとわかっていても抑えられない食欲。それでも、ささやかな抵抗はできるかもしれない。

山下祐司| Photo by Ashinari

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食べる“もの”より“順番“が大事

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できれば我慢したくない【写真:写真素材・足成】

 35才から75才まで参加したこの研究では、コンビニやスーパーなどで売っている鯖の水煮の缶詰、または牛肉の網焼き、というと味気ないが要は焼肉を食べ、15分の間隔をあけてご飯を食べるケースと、その反対の、先にご飯を食べるケースを比較した。

「糖尿病の治療に食事療法は毎日続くものです。研究とはいえ手に入れやすく、なるべくおいしいものを選びました」(矢部医師)

 食べる量を厳密にコントロールして計測した糖尿病患者のデータをみると、先にご飯を食べるより魚や肉を食べると血糖の上昇が緩やかになり、血糖値のピークも下がっていた。

 このメカニズムの解明のために、インスリンの分泌を促すなど血糖の調節に重要な働きをする、インクレチンというホルモンを調べるとその分泌が増えていた。また、胃で消化された食べ物が腸に送られる様子を調べると、魚や肉を先に食べたときにはゆっくりと腸に送られていた。また、健康な人の調査結果も血糖の変動やインクレチンの分泌が促進されるなど、同じような傾向がみられた。

 この結果から、食べる順序によりインクレチンの分泌が促されることで胃の運動が緩やかになり、血糖の変動が抑えられたと矢部医師は考えている。
 
 論文では魚や肉料理を食べた後に、15分の間隔を開けてご飯を食べているがその後の研究で時間の間隔は5分でも効果があり、10分で効果が最大になりそうだという。それなら会話でもしながら食事をとったり、テレビを見たりして休憩するなど、少し気をつけるだけで難なく行えそうだ。

 矢部医師が勧めるのは、よく言われているように健康な人であっても、やはり野菜を先に食べ、続いて肉か魚料理を食べ、最後にご飯というもの。肥満につながる脂質の多い肉料理より、魚料理を主に食べるというのも従来いわれているとおりだ。これからの研究では、もっとレシピのレパートリーも増やし、長期的な影響を調べる必要があるという。
 
「糖尿病は食事による影響が多大な病気です。これからも“食事のサイエンス“でアプローチしていきたい」と矢部医師は抱負を語る。

 確かな“食事のサイエンス”の発展は、飽食時代の我々が、より良い年の重ね方をしていくのに非常に有益に働くだろう。
 
 だが、いくら順序を守ったところで、食べ過ぎては元も子もない。少しでも糖尿病の不安があったら、自己判断はしないで早めの医師への相談が大切なのは変わりはない。

取材・文 山下 祐司

【了】

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