これが今年のトピックスだ! 人工ブラックホール? 高次元宇宙の存在証明 【ニュートン編集部が大予想! 03】

113番目の元素からLHC、ダークマターやブラックホール、そしてシャコのパンチまで! ニュートン編集高嶋さんが科学の面白さをまだまだ語る!

川口友万| Photo by Tomokazu kawaguchi , Newton|シリーズ:ニュートン編集部が大予想!

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修理完了! 大注目のLHC

ニュートン03
本当の宇宙の姿はドーナツ型? 超弦理論をモデル化したイメージ図【画像提供:超弦理論可視化プロジェクト(山口崇司・橋本幸士・塚田有那・成田真弥)】

――CERN(欧州原子核研究機構)のLHC(大型ハドロン衝突型加速器)が注目とか?

「去年から、本来のLHCの性能をようやく発揮できるようになったんです。

 これまでは、装置の一部が壊れるというトラブルがあったりして、所定のエネルギーの半分くらいしか出せてなかったんです。
 
 ようやく2015年から、ほぼフル稼働できるようになって、実験データを積み重ねてきているところなんです。

 そこで期待されるのがダークマターと呼ばれている粒子の発見です」

――よく聞きますね、ダークマター。

「宇宙には、原子で出来ている普通の物質の5倍ぐらいダークマターと呼ばれる正体不明の粒子、物質が存在していると言われているんです。

 それが加速器という実験装置で作れるかもしれないんです。
 
 素粒子の世界って実は非常に奇妙で、たとえばガラスのコップを落とすと割れますよね? 割れた破片っていうのは、元のコップにあったものですよね? だから破片を組み合わせれば、元のコップが復元できます。

 私たちが日常接している物質って、みんなそうですよね。バラバラになったら、元々構成してた要素がバラバラになる。でも加速器実験は違います。
 
 LHCは陽子と陽子をぶつけるエネルギーによって、そこにもともと存在してなかった粒子が作れる装置なんです。

 有名な相対性理論の“E=mc2”という式があります。エネルギーと質量は同じであると。

 つまりその衝突の凄まじいエネルギーを粒子の質量に変えることができるんですよ。

 なので、エネルギーを使って元々なかった粒子を作り出せるんです」

――それでダークマターを作る?

 エネルギーを使って、ダークマター粒子も原理的には作れるはずなんです。

 ただ、どれくらいの質量を持っているのかわからないので、どれぐらいのエネルギーを与えればダークマター粒子を作れるかわからない。

――できたら面白いですね。

「高次元の存在もLHCの実験で実証できるかもって言われてるんですよ。

 実は私たちの宇宙空間は3次元ではなくて、超弦理論(超ひも理論)などによると、6個か7個余分な次元がどこかにあるはずだと考えられているんです」

――超弦理論?

「そうです。超弦理論以外にも、高次元の存在を予言している理論が色々あります。

 たとえば、「重力の異常な弱さ」を高次元空間を使って説明しようとする理論モデルがあります。

 電磁気力などに比べて、重力は非常に弱い。磁石で鉄のクリップを持ち上げられますよね。

 でも鉄のクリップは直径1万3千キロくらいある地球という巨大なものに重力で引っ張られてるじゃないですか。

 だから重力よりも強い力でくっつけないとクリップは持ち上がらない。でも、小っちゃい磁石にひゅっとくっついちゃいます。重力は磁力よりも全然弱いんです。

 なぜ重力は弱いのか? 私たちは3次元空間にへばりついていて、重力だけは高次元空間に逃げ出せると。

 なのでその逃げ出した分、重力が弱くなっているんだと、そう考えるわけです」

――つまりLHCで高次元空間の存在を検証しようと?

「そうです。LHC実験では、高次元空間があった場合に存在するはずだと予言されている素粒子が見つかる可能性があります。

 また、ブラックホールができるんじゃないか? ともいわれています。

 高次元空間が実在していて、特定の条件を満たしていれば、LHCでの陽子の衝突によって小さなブラックホールができると考えられているんです」

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