ピロリ菌は歯周病の原因? 5300年前から人類を苦しめてきた細菌の最近

最近やたらとゲップが出る、またはおならが出るという方、ピロリ菌の検査をされたことがあるだろうか?ピロリ菌は胃がんの他にも多くの疾患に関わっている。

工樂真澄| Photo by ANN news CH,Getty Images

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アイスマンの時代から共生していたピロリ菌

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アイスマンの復元像
【写真:Getty Images】

 アルプス氷河で発見された5300年前の「アイスマン」。この大昔の中年男がピロリ菌に感染していたことが、年頭に話題になった。アイスマンの時代から、人類と胃痛は切っても切れない縁らしい。(「アイスマンにピロリ菌発見」が意味すること ナショナルジオグラフィック日本版)

 しかし、である。生物には絶対的ともいえる掟があって、種の存続にマイナスとなるような要因は残らないはずだ。どんな突然変異も、本当に種を絶滅させるようなものであれば、排除される。ピロリ菌が人と共生しているのは、なんらかの「ピロリ特典」があるからだ。

 最近スポットが当てられているのが、ピロリ菌に感染しているほうがアレルギーになりにくい、という研究だ。

 喘息やアトピー、アレルギー性鼻炎など、ピロリ菌保有者のほうが有意に少ないという結果が出ている。

 著しい衛生状態の改善により、現在の子どもではピロリ菌保有者が少なくなった反面、同時にアレルギー患者も増加しているのは、このへんのメカニズムが関係しているのかもしれない。

 現在のところ「日本ヘリコバクター学会」の方針により、ピロリ菌が原因で起こる疾患の治療、予防のために、感染者は除菌をするよう勧められる。

 自分がピロリ菌を持っているかどうかは、血液や尿の検査で安価で簡単に行えるので、定期検診の際に頼んでみるといい。一度「陰性」と診断されれば再度行う必要はないので、すっきりするだろう。

 万が一感染していたとしても、除菌はいたって簡単。一週間、抗菌薬や胃酸を抑える薬を飲み続ける。

 除菌率はこの時点で75%。もし耐性菌などがいて除菌にいたらなかった場合には、第二次除菌を行う。この時点で除菌率は9割とされるから効果は抜群だ。

 ちなみにピロリ除菌に保険が適用されるのは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、胃MALTリンパ腫、それに血小板が減少する紫班病を患っているピロリ菌保菌者、さらに健康診断で胃炎を指摘された場合などに限られる。

 もしピロリと共生していなくても、安心はできない。胃がんは恐ろしい病気で、自覚症状が少なく知らぬ間に進行しやすいため、効果的な治療は早期発見に尽きる。

 ちょっとした胃もたれの裏に隠された重大な病気を見逃さないためにも、定期検診だけはぜひ行ってほしい。

□参考
Exosomes as nanocarriers for systemic delivery of the Helicobacter pylori virulence factor CagA.
Shimoda A et al. Sci Rep. 2016 Jan 7;6:18346.
Helicobacter pylori-Mediated Protection from Allergy Is Associated with IL-10-Secreting Peripheral Blood Regulatory T Cells.
Hussain K et al. Front Immunol. 2016 Mar 7;7:71.
トップ画像提供:ミルメディカル

取材・文 工樂 真澄

【了】

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