松茸の培養、酵母のDNA情報を使った音楽、バイオの機材もDIY!?  「BioClub Meetup vol.3」前編

6月4日(土)に東京・渋谷のFabCafe MTRL(マテリアル)で、バイオテクノロジーの勉強会・Biohack Academyの受講生による成果発表イベント「BioClub Meetup vol.3」が行われた。

石水典子| Photo by Noriko Ishimizu

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なぜ今バイオなのか?

バイオ
株式会社ロフトワーク代表の林千晶さん
【撮影:石水典子】

 近年、菌の培養や遺伝子組み換えといった、バイオテクノロジーをDIYでハック(改造・改良)するためのウェット(バイオ)ラボを創設する動きが欧米を中心に見られる。

 デジタル工作機材などを備え、プロセスやレシピをオープンソースにすることで、大企業だけでなく個人のプロジェクトを活性化させ、たとえば新しいバイオ産業を生み出すことが狙いだ。

 講座生による発表の前、あらためてBiohack Academyについて、活動場所のFabCafe MTRLを経営する株式会社ロフトワーク代表の林千晶さんによるスピーチがあった。

「今個人のインスピレーションから、バイオテクノロジーの新しい産業が生まれています。可能性を生み出すのは、バイオテクノロジーのプロフェッショナルと限りません。

 分解や合成するといった生物の持つ機能が、バイオ以外の分野にどんどん結びついたりしている。そこが一番ワクワクする領域なのに、国にはそのメッセージがまだあまり届いていない。

 これまで、バイオテクノロジーというと医療や創薬といった対企業の視点が強かった。しかし、デザインやクリエイティブの変遷と同じように、いまバイオも個人主義な活動に移りつつあります。

 2003年にMITで始まった合成生物学の国際大会iGEMは、世界最大級の大会に成長し、バイオのベンチャー企業もどんどん出てきています。

 BioClubは、私たち個人で何ができるかを考えたり、可能性を広げられる基盤にしたい。日本が持っている微生物の研究やバイオテクノロジーの優れた研究を、他分野の領域と結びつけられる空間として成長していってほしいと思います」

 林さんはイベント中も、ディスカッションの中心となり発言をしていた。切れ者なのは間違いないが、問いの視点から察するに、変わり者でもあるようだ。

 この日、クマムシの研究で知られる堀川大樹さんが参加していた。堀川さんの話に、林さんは興味津々。クマムシとは、その耐性力が特徴で、-273℃から100℃まで耐えられたり真空空間でも生存できるという「最強生物」。

林さん「即身仏って、肉体が乾燥した状態ですよね」

堀川さん「即身仏に水をかけても、クマムシのように戻りませんよ」

林さん「ですが、永遠の生命という概念もありますよね」

堀川さん「…うーん」

 乾燥してしまうと仮死状態になるが、水をかけると戻るクマムシの生態から、実際の機能の話を超えて「死ぬ」という言語の成り立ちと概念についてまで議論を展開。

 仏さまもこれにはびっくりである。さすがバイオと他分野を繋ぐハブを目指している、BioClubをけん引する存在だ。

バイオ
Biohack Academyの様子
【撮影:石水典子】

 今秋のバイオラボオープンを目指して、引き続きプロジェクトは進行中。「最強生物」クマムシを題材にバイオの基本を学ぶワークショップイベント「BioClub GroupActivity クマムシ研究会」は6月26日より全3回開催。またBioClub Meetupは、7月1日に開催予定だ。

公式HP:
FabCafe MTRL(ファブカフェマテリアル)

BioClub | バイオクラブ

取材・文 石水 典子

【次回は、バクテリアで色彩パレットをつくろうとしたプロジェクトやDNAの塩基配列で音楽を奏でるプロジェクトなど研究発表の模様を紹介】

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