なぜ現役大統領が医学専門誌に「論文」を オバマは何を伝えたかったのか

7月11日、米大統領のバラク・オバマが『米国医師会雑誌』に投稿した記事が公開された。肩書きはもちろん「President of the United States」だ。

山下祐司| Photo by Getty Images

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医療制度に深刻な問題を抱えてきた米国

オバマ
バラク・オバマ現米国大統領
【写真:Getty Images】

 米国の現役大統領、バラク・オバマの名前が記載された「論文」が医学専門誌の『米国医師会雑誌』で公開された。

 体裁は一般的な研究論文と全く同じ。オバマ大統領が苦心して推し進めてきた保険加入の義務化を決めた医療保険制度改革、いわゆるオバマケアの成果と今後について記している。執筆者として記載されているのはバラク・オバマのみ。つまり大統領単独の執筆だ。

 2010年、共和党の強力な反対と身内の民主党からも数十人の離反が出るなか、なんとかしのいで上下両院で可決にこぎつけたのが医療保険改革をめざしたThe Affordable Care Act法だ。

 最大のポイントは保険加入の義務化。誰もが安心して医療を受けられるために日本では1961年に国民皆保険制度がスタートしたが、米国は2009年まで歴史的にこのような制度は存在せず、各人が自由に民間の保険に加入する方法をとっていた。

 例外的な公的社会保障は、主に高齢者が加入する「メディケア」と生活困窮者を対象とした「メディケイド」のみで1965年にこれらの法案は成立している。リンドン・ジョンソン大統領の時代だ。
 
 米国では皆保険制度がないため無保険者が多く、各人の医療費が高額になり、生活を圧迫、または破壊するので長年問題視されてきた。

 古くはセオドア・ルーズベルト大統領からビル・クリントン大統領の時代までときおりクローズアップされるが、小さな政府を基本とする共和党の強い反対で実現にはいたらなかった。

 治療できない(されない)患者を取り上げ、米国のいびつな医療制度のつまびらかにして注目されたマイケル・ムーア監督の「sicko(シッコ)」が公開されたのは2007年のことだ。

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