なぜ現役大統領が医学専門誌に「論文」を オバマは何を伝えたかったのか

7月11日、米大統領のバラク・オバマが『米国医師会雑誌』に投稿した記事が公開された。肩書きはもちろん「President of the United States」だ。

山下祐司| Photo by Getty Images

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論文に記されたオバマケアの成果と今後

オバマ
「Barack Obama」の記載がある米国医師会雑誌のWebサイト

 オバマケアでは人々は日本のように企業や自治体の保険組合に加わるのではなく、民間保険会社のプランを自分で選ぶ方法を採用している。もし、加入しなければ一部の例外を除き罰金が発生する。単身者で695ドルになる。

 また、50人以上の従業員を雇う企業も保険の加入も義務化された。また、医療保険取引所を新設して情報を提供し、競争の原理も使って効率よく保険を選べるような体制を整えた。

 オバマ大統領が「論文」で強調するのは無保険者の減少だ。2008年には米国人の7人に1人以上は無保険者だったが、オバマケアが運用された2010年から2015年までに無保険者は16%から9.1%にまで減った。

 その数は約2千万人になる。そして、18~64歳の非高齢者はより家庭医をもちやすく、治療を受けたり薬を処方されやすくなり、不健康の人が減った。多様な保険が販売されるようにもなった。

 また、医療の質も向上し、再入院する人の割合も激減したと成果を示す。一方で、19州でオバマケアの根幹をなす制度が導入されず、保険市場の活用や提供方法、処方薬の価格引き下げなどに改善の余地があると記す。
 
 オバマ大統領はメディケアとメディエイドが導入された1965年以降で、健康を管理するための最も重要な法律がこの医療制度改革法だと明示している。

 12日、バーニー・サンダース上院議員がヒラリー指示を明らかにし、民主党の大統領候補にヒラリー・クリントンが決定した。ヒラリーはオバマケアをもとに、処方薬の価格を管理して被保険者の負担を減らす考えだ。

 米国医師会雑誌のチーフエディター、ハワード・バックナーは一般的に投稿される論文のようにオバマ大統領によって2度書き直されたとブルームバーグのインタビューに答えている。

 そして、『米国医師会雑誌』のWeb版で、大統領選の候補者たちに今後のヘルスケアについての考えを大統領選挙の前に投稿して欲しいと記している。

取材・文 山下 祐司

【了】

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